昨日からずっと考えているのだけれど、ミクロの決死圏系のSFと、昔の特撮SFによく出てきたドリルカーの話。

ミクロの決死圏系のSFってのは、ミクロの決死圏とかインナースペースとかナノセイバーとか、要するに、縮小された人間がミクロサイズの潜水艇みたいな乗り物にのって、人体の中に入って、病気の治療とかナントカをする、という種類のSF作品。SF屋さんの間では、もっと正しい言い方があるのかもしれないんだけれど、「ミクロの決死圏みたいな」という言い回しで意味は通じると思う。

で、ミクロの決死圏みたいなSFに出てくる潜水艇って、どれも、モロ、潜水艦みたいな形状なんだけれど、そういう形はどう考えても非現実的だよな、、ってのは、まあ、普通の科学好きのSF好きなら、まあ、気がつくよね。だって、ミクロのスケールになれば、水の粘性がものすごく大きくなるはずだ。しかも、人体の中だ。もうドロドロして潜水艇なんてマトモに動けるわけがない。まあ、でも、体の中をミクロで動きまわる潜水艇っていうイメージがカッコイイから、みんな、そういう野暮は言わないでテレビを見てたわけだ。

ドリルカーってのは、サンダーバードに出てくるジェットモグラとか、ウルトラセブンに出てくるマグマライザーとか、ああいうヤツ。ドリルで地中を動きまわる戦車みたいなヤツだ。すっごくかっこいいメカで、僕は大好きだ。

でも、地中であんなドリルカーが動きまわるなんて非現実的だ。ドリルカーのドリルは摩擦が大きすぎて、現実には地中では動けないメカなんだ。まあ、でも、地中を動きまわるドリル戦車っていうイメージがカッコイイから、みんな、そういう野暮は言わないでテレビを見てたわけだ。

 さて、ここしばらく、本業の絡みで、もし、ミクロの決死圏のように人体の中を動きまわる潜水艇を、本当に作るとしたら、どういう形のものを作るべきか?つまり、科学的に正しいプロテウス号(ミクロの決死圏に出てくる潜水艇の名前だ)の形は、どんなものか?というのを考えていたんだ。

おそらく、「それ」はスクリューかプロペラで動きまわることになるだろう。極端に粘性の高い液体の中だから、スクリューの羽根はあまり大きく軸から張り出している訳にはいかない。そのかわり、後ろに付けられたスクリューは非常に長くて大きなものになるはずだ。たとえば、精子の鞭毛のように。あるいは巨大な(弾性のある物質で作られた)ドリルのように。

しかし、そうなると、スクリューが回転する反動で、船体は逆回転してしまう。したがって、スクリューは、前後に一つづつ(反対方向に回転するようなものが)付けられなくてはならない。後部スクリューが鞭毛に似ているなら、前部スクリューは、巨大な(弾性のある物質で作られた)ドリルに似たものになるだろう。

もちろん、鞭毛タイプの後部スクリューは、必ずしも回転しなくてはいけないわけではない。蛇が左右に体を動かしながら進むように、鞭毛を揺らしながら進んでもいい。そういうふうに作れば、前部スクリューは不要になる。だが、「揺らす」タイプのマイクロマシンより、「回転する」タイプのマイクロマシンのほうが作りやすくてトラブルも少ないのじゃないだろうか?

 というわけで、リアルなプロテウス号は、前にドリル、後ろに長い尻尾のついた潜水艇、もしくは、前後にドリルのついた潜水艇の形になる、はずだ。

というわけで、 リアルには存在できないと考えられたジェットモグラは、新たに、「人体の中のミクロの世界」という科学的に正しい舞台を与えられるかもしれない。サンダーバード、人体内の災害救助のために出動せよ!